名古屋市中区で内視鏡・胃カメラ検査なら三浦内科へ
HOME>症例紹介

症例紹介

1. 50歳前の男性。

二週間前から胃が痛く、三日前に近医を受診し薬を処方してもらったが良くならないとのことで紹介される。
体温36,4度。血圧124/74。痛みが出てから一度も発熱はないという。まず腹部の触診。
右下腹部に強い圧痛を訴え、触らせないようにする。本人は一度もこの部位の痛みに気づいていなかった。
腹部全体の把握のために超音波検査(腹部エコー)を行う。
肝臓、胆嚢、胆管、膵臓、腎臓、脾臓に異常なく、腹部のリンパ腺、大動脈、膀胱、前立腺も正常範囲。
右の下腹部の観察では、虫垂と思われる部位が腫大し、糞石と思われる石灰化巣がみられる。
この年齢で発熱のない急性虫垂炎は見たことがない。採血し白血球とCRPをチェック。同時に念のため腹部のCT検査をする。
白血球は16200と正常の倍ぐらい。CRPは3+。CTでも腹水等は認めず虫垂炎以外の診断は考えられない。
いつもお世話になる大病院の救急部門に電話し、患者さんの状態を説明した上で、受け入れを確認。
本人は救急車による搬送を希望せず、一般状態も良かったのでタクシーにて病院へ。
翌日時間が取れたので病院へ患者さんを見舞う。虫垂炎として手術をされ、胃の痛みは治まったが手術の部位がひどく痛いという。
盲腸の手術は自分も経験したが、術後はかなり痛むことを説明。

感想

はじめに聞いた症状からは、大きな潰瘍とか胆石症あるいは膵炎を考えたが結果はまったく違ったものだった。
おなかの触診はおなかの痛みを訴える患者さんを診る場合一番大切な診療行為であり、満遍なく力の入れ具合を加減しながら診る必要がある。
圧痛のある部位に病変があることが多くたとえば右の上腹部であれば、胆石症や十二指腸潰瘍を考える。
またこの患者さんでは来院する前夜は胃の痛みのためほとんど眠れなかったという。
一晩眠れないような痛みが続いた場合、それだけでも入院してもらったほうが良いくらいである。
痛みのために眠れなかったかと聞く意味は大きい。

2. 80代の女性。

血液の検査でγGTPが120と上昇していたため紹介される。
まれにではあるがこの検査値をきっかけに軽症の原発性胆汁性肝硬変という一寸恐ろしいような病名をもらってしまうことがあるが、多くは脂肪肝や薬の影響によることが多い。エコーで肝臓を観察すると、肝臓の中を走る胆管がごく一部で少しだけ拡張している。
以前40歳後半の男性にこの所見をきっかけに小さな肝臓内の胆管がんを見つけたことがある。
この人ではよく観察しても肝臓内に腫瘍は見つからなかった。しかし胆管がんの可能性を否定できず病院での精査を勧める。
諸検査の結果比較的初期の総胆管がんであった。

感想

肝臓内の胆管がごく一部でも拡張している場合胆管がんを第一に考えたい。
胆管結石でも拡張することはあるがその場合全体的に拡張していることが多い。
もちろん全体的に拡張していて胆管がんのこともある。
乳頭部がんのこともあるし、ミリィツィ症候群やレンメル症候群の事もある。

3. 80代の女性。

4日前から胃の右側に痛みが出現、この2日間はずっと痛いとのことで紹介されてきた。
痛みに波はないがきついので背中を丸めておなかをかばうようにして歩く。吐き気はない。
普段から便秘気味だがトイレのシャワーを当てると何とか出る。
この3日間は日に1食ぐらいしか食事が取れず、いつもの薬も飲んでない。
きのうは37,7度の発熱があったが来院時は36,8度、血圧170/73。
おなかの触診では右上腹部に軽い圧痛と多少の抵抗を見るが全体としては柔らかい。
腹部エコーでは、肝胆膵や腎臓に異常なく圧痛のある部位の胃壁か腸壁が少し分厚くなっている印象があるがはっきりしたものではない。
500ミリリットルの点滴を終えると、体はすっかり楽になり痛みも気にならなくなる。・・・さて何を考えるでしょうか?

先生の見解

もしやと思って、患者さんの了解の下できるだけ愛護的に胃カメラをした。空気はあまり入れず、大きな病変が無いかだけをチェックした。
十二指腸球部に入ると巨大な深くえぐれた潰瘍が見られた。空気を抜きながらカメラを速やかに抜去し、しばらく入院が必要なことを話した。
症状からはすぐには潰瘍に結びつかないが、触診とエコーで十二指腸のあたりが気になったのが幸いした。絶食期間も含め10日で退院できた。

4. 80代の女性。

きのうの朝から3回の下痢があり、また吐き気と嘔吐が続いた。一日で6回ぐらい吐いた。夜はうつらうつらと何とか眠れた。
体がエライので来院。どこかが痛いということはない。体温、36,9度。血圧、143/80。脈拍、84。
おなかは全体に柔らかく、多少の圧痛を訴える部位はあるものの抵抗や腫瘤は認めない。腸ぜん動の亢進も認めない。
手術をしたあとも見られない。腹部エコーで胆石を認めるが同部に圧痛はなく胆嚢の腫大もない。小腸が少し拡張し液体の貯留が認められる。
白血球、16000。CRP3+。腹部単純写真でニボーが多数見られる。便培養をすることにした。
500ミリリットルの点滴をしたが排尿がほとんどないので少し迷ったが入院してもらうことにした。
さてどんな病気を考えるでしょう。

先生の見解

入院後の造影CTで盲腸のあたりに何か病変がありそうとのことだった。
便のヒトヘモグロビンは2ヶ月前に2回とも陰性だったが、腫瘍性病変によるイレウスも否定できないという。
2日後見舞いに行ったときはイレウス管が入っていたが、本人はすっかり元気にしていた。
その後大腸カメラで盲腸と回腸末端をチェックするも異常はなかった。そのころ便の培養結果が出、病原性大腸菌018が検出された。
病原性大腸菌の感染では右側結腸に炎症が起こることも多く、強い痛みを伴い壁も激しく肥厚し虫垂炎との鑑別が困難なこともある。
この方の場合痛みはなかったが、この感染のために麻痺性イレウスになっていたのかもしれない。
またこの患者さんでは造影CTで2箇所に古い大動脈解離のあとが見られたとのことである。
本人の自覚なく自然治癒している症例は他にも見たことがあり不思議なものだとおもう。

5. 83歳の男性。

2日前の朝から胃が痛く空腹のためかと思い少し食べてみたが楽にならない。間歇的な吐き気を伴う痛みで5分おきぐらいに何回も繰り返す。
左の下腹部も痛い。尿意を催すたびに、大便もしたくなり柔らかい便が少量出るが血は混じらず黒くもない。
昨日は夜中に2時間ほど強い痛みがあったが嘔吐したあと楽になった。その後は5時間ぐらい眠れた。
他医より胆のうあるいは腸管由来の痛みを考えるがどうかとのことで紹介を受ける。
体温、35,9度。 血圧、130/80。 脈拍、92(もともとこのくらいという)。白血球、12000。CRP,1+。
5年ほど前に胃潰瘍、戦後間もなく虫垂炎で手術。
CTがとられていたので胆嚢や膵臓の腫大、腹水、フリーエアー、腎結石、大腸憩室炎、腸閉塞などの有無をチェックしたが問題なし。
腹部は平坦で胃の辺りと左下腹部に軽い圧痛を認めるが腹膜炎を疑わせる所見はない。
500ミリリットルの点滴終了後は、ガスも出てよく眠れすっかり楽になったという。
ノロウィイルス感染等も考え、食べたくないときは無理に食べず水分のみ十分取ること。
おなかがすけば消化の良い暖かいものを食べること。食べられなければ明日も点滴を受けることと話し、胃カメラの予約をして帰宅。
さてどんな病気を考えるでしょうか。

先生の見解

受診後の3日間はかなり楽で、暖かいものを食べていた。4日目の早朝、突然強烈な胃の痛みが生じ我慢ができないので救急車を呼んだ。
病院での検査の結果、十二指腸潰瘍の穿孔の疑いで緊急手術となった。入院期間は約40日。
実はこの患者さんは症例3の前にいらした方です。
来院された日に胃カメラもしておこうかとも考えたのですが、点滴をしてやっと楽になったところだから後日にしようと予約だけしてもらいました。
あの時もしカメラをしていたら、その直後に穿孔を起こしたかもしれません。どちらが良かったか今も時々考えます。

問い合わせ