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その他の病気

その他の病気一覧
 
■B型肝炎について
■ピロリ菌について
■脂肪肝について
■慢性疼痛のマネジメント

B型肝炎についてのイメージ

二十年ほど前にこのテーマでこのエスエルニュースに記事を書いたことがあります。
そのころは効果的な治療法もなく、また大人の感染では慢性化することはありませんといっておけば済みました。
しかし今世紀になって事情は一変しています。興味のない人にとっては難しい話になるかもしれませんが、B型肝炎に関する最新の知見を網羅してみようと思います。
知り合いの誰かがこの病気だったらそっとこの記事を手渡してあげてください。

感染の仕方と経過

現在日本には約百三十万人の感染者がいてその大部分は母子感染によるものです。 母子感染あるいは乳幼児期の水平感染による場合、35歳ぐらいまでに80~90%の人が特別の治療もせずに臨床的治癒状態になるため、多くの場合そのころまでは年に二回程度の経過観察で済みます。
実際に治療が必要な患者さんは全国で十万人ぐらいとされています。
成人になってからの感染の原因は、感染者との性交渉によるものが60%強、不明35%強、その他覚せい剤のまわし打ち、医療従事者の針刺し事故等があります。この場合20~30%の人が急性肝炎になり、そのうちの約1%が劇症化します。
20年前であれば、成人の感染例の慢性化率はほぼ0%と言えたのですが、現在は外国人と性交渉を持つ人も多く、5%位が慢性化します。
欧米では成人になってからの感染者の約10%が慢性化するといわれていますがこれは同じB型肝炎ウイルスでもタイプが違うためです。
世界には8種類のタイプがあり、日本では圧倒的にゲノタイプCが多く、ついでB、成人例で慢性化しやすいのは欧米型のAe型とされます〔ゲノタイプBやCでも慢性化することはありえます〕。
なお急性B型肝炎の診断にはIgM型HBc抗体が高抗体価であることが必要です。(HBc抗体も同時に測定しておくと良い)

治療したほうが良い場合

35歳までは基本的には経過観察のみでよいのですが、平成19年の厚労省研究班によるB型慢性肝炎患者に対する治療ガイドラインでは治療対象が次のように定められています。
ALT(GPT)31以上で、かつ(1)HBe抗原陽性例は、HBV DNA量5log copies/mL以上  (2)HBe抗原陰性例は、4log copies/mL以上この条件に当てはまる患者さんで35歳未満の方は経過観察あるいは主としてインターフェロンを使用し、35歳以上では主としてエンテカビルを使用します。もう少し細かく分類されていますがあまりに専門的なので割愛します。
上記の二つの条件を満たさない患者さんは経過観察のみです。

治療法とその特徴
  • 1 インターフェロン

    以前は4週間の連日投与しか認められず、効果もほとんどなかったが2002年1月以降、6ヶ月投与が可能になりました。
    08年4月から自己注射が保険適応〔6ヶ月間〕。
    叉、08年4月1日以降、保険適応となっているインターフェロン治療に対して愛知県の医療給付事業が開始された。
    (詳しくは愛知県健康福祉部健康対策課)。
    インターフェロンを長期投与したときに十分な効果〔著効〕が得られる割合は、35歳未満で0~25%、35歳以上でおよそ10%とC型肝炎の場合と比べて低率ではある。
    しかし35歳以上でもゲノタイプAおよびゲノタイプBではより高い効果が認められる。
    副作用として感冒様症状、血球の減少、蛋白尿、甲状腺機能の異常、精神症状〔特にうつ病〕、間質性肺炎などがある。

  • 2 核酸アナログ製剤

    B型肝炎ウイルスの複製過程においてウイルスに誤った情報を与えて再生させないようにする薬剤です。
    強力なウイルス抑制作用があり最近の治療法の中心となっています。2000年11月以降、以下の3種の抗ウイルス剤がつぎつぎと保険適応となり、さらに新たなものも開発されつつあります。

    • ラミブジン(ゼフィックス錠)他剤に比し安価である。催奇性が少ない。
      耐性が生じやすく、6年で約60%に達するが、それ以降に耐性が生じることはほとんどない。
      耐性ウイルスの出現により肝炎の再燃が起こりうる〔重症化する症例あり〕。中止後に肝炎の再燃が起こる可能性がある。
    • アデフォビル(ヘブセラ錠)
      現在では主にエンテカビルにたいする耐性ウイルスの出現時に追加して使われる。腎機能障害に注意(隔日投与に切り替える)。妊娠は不可。
    • エンテカビル(パラクルード錠)
      ラミブジンに比しはるかに強力な抗ウイルス作用を有し、耐性の出現頻度は3年で3%前後とラミブジンの十分の一以下である。
      高価。妊娠は不可。現在は核酸アナログ使用時の第一選択薬。
      耐性出現時はアデフォビルをかぶせて使用。使用中毎月ウイルス量を測定し、上昇してきたときは耐性が出現したと考える。
      原則として一生服用する(勝手に中止すると肝炎の再燃が起こり易いのでいい加減な人には投与しないこと)。
      しかしHBs抗原が陰性となり5年以上続けば中止も可能と思われる。
  • 3 対症療法

    グリチルリチン(強力ミノファーゲンC):ALTの低値安定化が期待でき肝炎の沈静化に役立つ。高血圧,低K血症に注意。
    ウルソデオキシコール酸(ウルソ錠):肝庇護作用がある。ほとんど副作用がない。

なぜ治療するのか

ウイルスの除去あるいはウイルスの増殖を抑えることによって肝炎の進展や発癌を防ぎます。
HVD-DNA量が多ければ発癌のリスクが大きくなりますが、それを4log copies以下に保っておくと発癌リスクは著明に低下します。
ウイルス量が6log copies以上の時はたとえHBe抗原が陰性で、GPT(ALT)が正常であっても発癌のリスクは高くなります。
肝繊維化の程度によっても発癌のリスクは大きく変わります。治療により肝の繊維化の進展を防ぐことで肝硬変や肝癌の発症を抑えることができます。
肝の繊維化の程度は腹腔鏡による肉眼所見と肝生検所見が決め手になりますが、血液検査のヒアルロン酸やプロコラーゲンも参考になります。

肝癌の診断

年間3万5千人の肝癌による死亡者のうち約80%はC型由来、10%がB型由来とされてきましたが最近は肥満を一要素とする非アルコール性脂肪肝炎によるものが増え、ウイルス由来は二者合わせて75%という説もあります。B型肝癌はC型由来のものに比し画像診断上の特徴に乏しく、大型になって始めて診断のつくことが間々あります。
叉肝硬変を経ない直接発癌も多く見られます。定期的な超音波検査(年に一回はCTかMRI;単純+造影で)、そして腫瘍マーカー〔AFPとPIVKA―Ⅱ〕のチェックが必要です。

その他
  • オカルトHBV感染の発癌促進作用が示唆される。これはHBs抗原陰性なのに血中または肝組織中にHBV-DNA陽性のものをいい、非B非C型肝硬変のうち約10%に見られるという。
  • デノボB型肝炎は発症すると致死率が高い。HBs抗原陰性だが、HBc抗体陽性またはHBs抗体陽性。(このなかにはHBV-DNA陰性の例も含む) 
    その発生頻度は悪性腫瘍の全身化学療法では1~3%。リツキマシブ・ステロイド併用療法では約12%と高率。ウイルスの再活性化による。
  • HBVによる針刺し、皮膚・粘膜汚染後の対応
    血液を搾り出しながらの流水による傷口の洗浄後事故者の採血。HBs抗原陽性またはHBs抗体30mIU/ml以上(PHA法では15倍以上)なら放置。
    ワクチン接種歴なくHBs抗原および抗体とも陰性ならHBIG5ml筋注+HBワクチン10マイクログラム皮下注。
    ワクチン接種者はHBs抗体陽転化の見られた後で力値の低下したもの、あるいはHBs抗体価が30mIU以下のものはHBワクチンの追加摂取のみ。 
    摂取後の陽転化が確認できずHBs抗体陰性であればHBIGとHBワクチンの両者を使用。 ワクチン追加は初回接種であれば1ヶ月後と2ヵ月後に行う(若い女性は2回で90%つくので3回目は効果を見て4ヵ月後でも良い)。
    なお相手方の状況が分からないときは本人の強い希望があれば上記の対策をして良いという説と、副作用が皆無ではないのだから放置すべきとの説がある。
ピロリ菌についてのイメージ

新聞などで時々取り上げられるのでご存知の方も多いと思います。 胃の中に住む細菌で、胃潰瘍や十二指腸潰瘍あるいは胃癌の原因と考えられています。 世界人口の約半数が感染しているといわれ、日本人に限れば、現在55歳以上の人で80%、40歳以下の人では30%以下の感染率と考えられます。 世代によって感染率に大きな差があるのは戦後の日本の衛生環境が急速に改善してきたためとされます。

胃癌との関係

日本では年間約10万人が胃癌になり約5万人が胃癌で亡くなっています。
ピロリ菌陽性者は陰性の人に比べ5~6倍胃癌になりやすいともいわれます。
日本および東アジアにおけるピロリ菌は、欧米のものと多少遺伝子構造が異なりまた病原性も強く、長期の感染により胃癌が発生しやすくなると考えられます。
胃癌の治療法は二十年ぐらい前までは、どんなに小さなものでもおなかを切って胃の三分の二を切除するというのが常識でした。
それが劇的に変化したのは、内視鏡を使って癌のある部分の粘膜だけを切除する方法が開発されてからです。
おなかに傷はつかなくなり、胃癌を切除した時にできた潰瘍さえ治れば胃はほぼ百%元通りです。
これ以降癌を小さなうちに見つけるのは、消化器医にとって大きな命題になりました。
日本人男性のように平均寿命まで生きれば十人に一人弱の割合で胃癌になるとも言われる状況では、きちんと検査を受け小さく浅いうちに癌を見つけ出すことは大事なことかもしれません。
当科でもすでに六十人以上の微小癌の患者さんたちがこの治療法を受け(大学病院へ1~2週間入院してもらいますが)
その後の人生を快適に過ごしておられます。残った胃に新しく癌ができるのを防ぐ意味でも除菌治療は欠かせません。

※ピロリ菌について〔続き〕
胃潰瘍・十二指腸潰瘍。
ピロリ菌が存在せず特別な薬〔消炎鎮痛剤等〕も使っていない状態で潰瘍ができることはほとんどありません。
また潰瘍が治癒し薬を中止すると一年以内に再発する率は60%です。しかしピロリ菌を除菌できれば、再発率は10%前後に低下します。
その他の病気―胃MALTリンパ腫、萎縮性胃炎、胃の過形成性ポリープないし炎症性ポリープ〔除菌に成功すると80%位でポリープが縮小または消失する〕、特発性血小板減少性紫斑病(除菌により50%位で血小板の増加が見られる)、慢性蕁麻疹、鉄欠乏製貧血、等でピロリ菌感染との関連が見られます。
これらのうちよく経験する胃のポリープについて詳述する。胃のポリ―プで多いのは、胃底腺ポリープと呼ばれるもので大きさはせいぜい5ミリまで、20個30個と多発することもある。これらは出血や癌化の恐れも無く、放置しても無害のことが多い。一方過形成性ポリープはまれに癌化することもあり、出血を繰り返し貧血の元になることもある。これを治療するには数日間入院し、内視鏡を使って切除するしか方法は無かったが、今は除菌を試みるのが第一選択となりました。
当科でも6例に試みいずれも成功しています。大きなポリープが消失、あるいは痕跡のみのポリープとなっているのを確認したときの喜びは大きい。
診断―もっとも簡便な検査法は血液や尿を使っての抗体のチェックです。この方法で感染の有無を90%以上正しく判断できる。
さらにもう少し精度の高い検査法として尿素呼気試験や便中抗原検査があります。除菌が成功したか否かを調べるにはこちらが良い。
治療―ピロリ菌の生育を抑制する二種類の抗菌剤と、一種類の胃酸分泌抑制剤を1週間服用します。除菌の成功率は70~80%です。
残念なことに現在保険で除菌できるのは、胃潰瘍または十二指腸潰瘍と診断された方だけです。

脂肪肝についてのイメージ

健康診断で血液の検査や腹部の超音波検査を受け、あなたは脂肪肝ですといわれた方は多いと思います。
いつも指摘されるので慣れっこになってしまい気にも留めない人も多いでしょう。普通はそれでよいのです。
脂肪肝なんて普通に食事をして通勤のときぐらいしか歩かない現代人にとっては当たり前の現象です。
医者ですら、あんなのは検診病だ。放っておいても何の心配も無いと豪語する方もいます。 しかし人によっては脂肪肝が進んで肝硬変や癌になることもあるのをご存知でしたか?
一番長生きするのは少し太り気味の人であるというデータもあるのに、世は挙げてメタボリック症候群の追放に躍起となっています。
少し変な感じもしますが、これからますます増えそうな硬塞性の疾患(脳や心筋や足の血管が詰まる病気)を恐れて早めに手を打とうということであれば理解できます。
どこの血管が詰まっても生活は大きく傷害されます。
思うように動けなければ生きる楽しみも半減し、場合によっては人の手を借りなければ生活そのものが成り立たなくなるかもしれません。
メタボな疾患の代表例は糖尿病や高脂質血症、高血圧といわれますが、糖や脂質の代謝がどこで行われているかというとそれは肝臓です。
ですから肝臓の病気特に脂肪肝はメタボな病気の中心に位置すると考えることもできます。
しかし脂肪肝の大部分は、放置してもそれ自体あまり問題を起こさない。問題になるのはそのうちの一割の人です。
お酒によるものもそうですが、まったくアルコールを嗜まない人の栄養過多による脂肪肝でも約一割の人に、脂肪肝炎といって肝臓が徐々に硬くなる傾向が見られる。
このような人では将来肝硬変から肝癌を合併することもあります。
普通の脂肪肝と肝癌になるかもしれない脂肪肝炎を明確に区別する方法は、現時点では肝生検といって細い針を皮膚から肝臓へ突き刺し肝臓の組織をとって顕微鏡で観察するしかない。
残念なことに血液の検査やエコーによる検査では肝臓がかなり硬くなってから出ないと区別ができないのです。
肝臓を硬くする(肝の繊維化)メカニズムとしてインスリン抵抗性やレプチン抵抗性ということが言われます。
インスリンは組織でブドウ糖が利用されるのを助けますが抵抗性があるとその働きが邪魔されて血糖値が高くなりやすい。
レプチンは本来食欲を抑える働きがありますが、それに抵抗性のある人では効果が少なく、レプチンが高い値を保つにもかかわらず太ったままで、多すぎるレプチンが肝臓を硬くしてしまう。
どちらもダイエットとしっかり歩くことで改善されます。
仕事が忙しくなるにつれてついつい外食に頼りがちになりますが、気をつけることは何でしょう。もちろん食べ過ぎないことが大事です。
そして1、「揚げる」より「煮る」、「焼く」。2、野菜の多いもの。3、できるだけ定食を選ぶ。もうひとつ、とにかくよく噛む。
私の外来で肝癌のため手術を受けられた人のうち、三人が脂肪肝炎によるものでした。
怖いのはその三人とも血液の検査であまり異常が見られなかったことです。
それこそ、時々肝臓の数値が上がっているけど問題ないでしょう、といわれそうな変化だけでした。
強いて言えばそのうちの二人は血小板が低めでした。たまたま私が腹部の超音波検査を依頼され肝臓の癌を見つけたのです。
ですから五十歳を過ぎて肝臓の数値に少しでも異常があるといわれたら、ぜひ腹部エコーの検査も受けるようにしてください。
でもできれば若いうちに脂肪肝といわれなくなっておくことです。

慢性疼痛のマネジメント ―痛みの心理学― 丸田俊彦先生のイメージ

丸田先生はメイヨ・クリニックのレジデントであったころから疼痛マネジメントにかかわり、精神科の教授として、また疼痛マネジメントセンターのセンター長として職を全うされるまで三十年以上にわたり米国の第一線で慢性疼痛に取り組まれた方です。
今回は貴重な講演を頂くことができましたのでその内容の一端を御報告します。

1.はじめに

はじめに若いころの二つのエピソードが提示されました。

  1. 当直のとき首に痛みを訴える患者が来て、pain in the neck という言葉を使った所、その言葉には厄介者という意味があると教えられたこと
  2. 45歳の強い腰痛を訴える患者に対し、手術をするか否かの判断を求められたので、 心理的な要因が強くなければ手術すべきであろうと回答した。
    指導医がやってきてどうやってその痛みが心理的なものである(あるいはない)と知ることができるのだと問われた。
    この二つのエピソードは後にこの講演について語ろうとするとき非常に興味深い意味を持ってきます。
    慢性疼痛の患者は治癒しがたく、熟練した医者にとっても扱いにくい難病となりやすいこと。 だからといって心理的な面を強調して痛みの原因は心と決め付け、これ以上、身体的検索・治療の必要なしとされたのでは患者は行き場を失ってしまう。
    ひとつの結論は身体的疼痛と心理的疼痛は区別すべきでもないし、区別もできないということであった。 
    確かに医者の注目を引くために身体症状を訴える患者や、痛みの訴えの程度が気質的な所見を上回るいわゆる慢性疼痛の患者は多い。
    さまざまな変遷を経て現在の慢性疼痛性障害の診断基準は以下のごとくなっている。
2.慢性疼痛の定義
  • 1つまたはそれ以上の解剖学的部位における疼痛が臨床像の中心を占めており、臨床的関与に値するほど重要である
  • その疼痛は、臨床的に著しい苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている
  • 心理的要因が、疼痛の発生、重症度、悪化、または持続に重要な役割を果たしていると判断される
  • その症状または欠陥は、(虚偽性障害または詐病のように) 意図的に作り出されたり、捏造されたりしたものではない 
  • 疼痛は、気分障害、不安障害、精神病性障害では上手く説明されないし、性交疼痛症の基準を満たさない(持続期間が6ヶ月以上を慢性とする)
    これらの症状を訴える患者の中には、
    • この痛みを自分の存在根拠のように考えている人がいる
    • 痛みのために周囲が注目し同情するといった自分にとって好都合な反応を得られることがある
    • 痛みを自分の体への警告と受け止め、無理をしたらかえってひどくなってしまうのではないかと考えてしまう人がいる
    • 抑うつ的な傾向を持った人がいる〔およそ2/3の患者にみられる)
3.患者へのアプローチ

痛み知覚ゆえに痛みが生じる。その痛みに対して痛くてつらいと感じる。
さらには痛みのつらさに支配された行為・行動が生じる。(痛み行動))。
それは多くの場合、「痛みに圧倒されそう」とか「こんなに痛くてはどうしようもない」といった「受け身的、反応的、無力」な感情に支配された消極的なものである。
またこの痛み行動はそれに対する周囲の反応によって規定される面もある。
従って痛み行動が強化される(報酬を与えられる)様な条件下ー痛いと顔をしかめれば車椅子がすぐ用意され同情を受けるようなーでは、痛み行動は強化されるし、痛みに対する中立的な対応のもとでは、痛みは軽減する。痛み行動を保持しているのは 

  1. 周囲の環境からの反応と
  2. 患者の思考や情緒である。

思考内容や感情は人体の生理に影響するし、また行動の推進力ともなる。それゆえ

  • 認知・行動療法の目的は患者自身に対する見方を「積極的、臨機応変可能、有能」へ置き換える(自分が持つ能力に対する自信の回復)
  • 患者が自分の思考、感情、行動をモニターし、それらの相関に注意を払えるようになるようにする(自動的で不適切な行動の中絶)
  • 痛みの問題に対する適応的な行動を教え、それをいつどのように実行するか体験させる。(新しい適応技術の訓練)
  • 不適応的から適応的という患者の変化が患者自身の努力の賜物であることを強調する
  • 〔行動の変化を起こす主体は患者であることを強調し、治療への患者の積極的な参加を呼びかける〕
  • 将来起こりそうな問題と、そうした問題に対する対処の仕方を検討する〔適応的な行動の保持と促進〕

このような方法によって患者に、より適応的な考え方、感じ方、行動の仕方を学習させる。 
患者には痛みに頼り、痛みに支えられている面もある。耐えがたい人生を痛みに支えられ、不自由に、苦しくても何とか生き延びている面もある。
慢性疼痛は患者がかかった一つの病気というのでは無い。それは患者の生き方そのものである。
この概念をいかに患者が理解し納得してもらうかが治療のキイになると思う。
そのためには良好な医者・患者関係や、さまざまなプログラムを通じて、認知が深いところで変り、消極的な心の流れが積極的なものへと自分の中から湧き上がるようにすることが大切である。

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